目次
参加者
ゆうすけ
Nanami
Nao
AI翻訳があれば、英語学習はしなくてもよい?
ゆうすけ
Nanami
Nao
ゆうすけ
Nao
ゆうすけ
Nanami
コミュニケーションには異文化理解が不可欠
Nao
今後、機械翻訳が発展していき、「機械翻訳を通せば、外国語を理解できる/外国語で伝えられる」となった時、疑問として上がるのは、議題にも挙がっているように、学習者はなぜ外国語を学ぶのか?ということです。そこで思うのは、機械翻訳があれば、表面的な意思の疎通をすることができたとしても、文化的な差異を埋めることはできないのではないでしょうか。
コミュニケーションをとる時、言語からのみ情報を理解できる割合は35%、残り65%は非言語から読み取ると言われています2)Birdwhistell, R. (1970). Kinesics and context. Philadelphia: University of Pennsylvania Press.。機械翻訳が言語面をカバーできたとしても、それを用いて意思疎通を図るのは人間であり、非言語の中身は文化によってそれぞれ異なります。だから、文化によって「考え方が違う」/だから「伝え方も違う」ということを理解する必要がある。そして、その文化ごとの「考え方」「伝え方」を学ぶためには、その言語を学ぶことが必要だと思います。
現在、文部科学省で述べられている外国語科における評価の4観点は以下の通りです。
- コミュニケーションへの関心・意欲・態度
- 外国語表現の能力
- 外国語理解の能力
- 言語や文化についての知識・理解
この評価の枠組みに当てはめていうと、機械翻訳が発展し、自ら外国語を操らなくても「外国語での意思疎通」ができるようになった時、特に重視していくのは、「①コミュニケーションへの関心・意欲・態度」と「④言語や文化についての知識・理解」だと思います。
加えて、機械翻訳はただ言葉を入れればいいわけではなく、正しく機械翻訳されるために必要なプリエディットや、機械翻訳された後の翻訳文も正しく編集するポストエディット、といった作業が必要です。そこで、今後は、機械翻訳の扱い方も含めて、言語学習を通した自文化と異文化への理解が求められると思います。
Nanami
Nao
Nanami
ゆうすけ
Nao
Nanami
ゆうすけ
ユーザーがAI翻訳の正誤を確認する必要がある
Nanami
まず1つ目に関してですが、「機械翻訳がある時代に」という議題なので機械翻訳を(日常的に)使用する世の中、または使いたいときには使える世の中であることを前提としますね。その時に「機械翻訳があるから自分の言いたいことはその言語に変換されて伝わるし、学ばなくてもいい」というのではなく、むしろ機械翻訳を使用するのだから「訳された文は自分の言いたいことと一致しているか」を判断できる能力が必要だと思います。いつも訳をみてくれる校閲者が自分のそばにいるわけではないのだから、自分自身がチェックできる人でないといけない。
2つめの理由は、機械翻訳どうこうというより、外国語を学ぶことの本質を考えた時に必要だと感じました。どういうことかと言うと、言語の仕組みを知っているかではなく、外国語を学ぶことで自分の思考に刺激を与えられるということです。母語でコミュニケーションをしているときは (理解されることが当たり前に過ぎて)改めて言葉を見直す機会があまりありません。対して外国語を使用しているときは、word選択や話す順序なども含め、普段母語で行う思考から少し離れることで、自分の言いたいことが実はクリアでなかったとか、わかっていると思っていたことが実はわかっていなかったというように、自分が言葉を発する際、言いたいことと自分が理解していることのgapに気づきやすい。それに気づくからこそ、自分の思考や理解を見直し、なんとかしてわかる状態にいくための手段を探して解決する力もつくのではないかと思います。もし機械翻訳が完璧だとしたら、言語(の仕組み)を学ぶ意味はなくなるかもしれません。でも、自らの思考や理解の観点で考えるなら「母語で話しているときには陥らない思考に陥ることができる」という点において、機械翻訳があったとしても、外国語を学ぶ必要性も考えられるのではないかと思いました。
Nao
Nanami
ゆうすけ
Nanami
ゆうすけ
Nanami
Nao
ゆうすけ
機械翻訳はスコポスを訳せない
ゆうすけ
理由は、大西さんの意見と被るのですが、やはり訳文を確認しなければならない時がやってくるからです。たしかに、一部の英語のプロフェッショナル(翻訳者)にその確認を任せてもかまわないかもしれません。現に機械翻訳の訳文を編集するポストエディットがいま翻訳業界でも注目を集めています。
しかし、現状の翻訳者が翻訳できる情報はほんのごく一部です。ある調査8)Common Sense Advisory. (2018). Machine Translation for Human Innovation. Retrieved on November 17, 2018 from http://www.commonsenseadvisory.com/machine_translation.aspxでは、世界のコンテンツの1%以下しか、翻訳されていません。また、アクティブなプロ翻訳者はおよそ20万程度しかいないのに対して、世界の翻訳需要を満たすには2,000万人の翻訳者が必要である、とも報告されています。このことから、人間の翻訳のみに頼っていては、単一言語話者は世界の情報のごく一部しか参照することができないと言えます。このことは英語による情報の格差に繋がります。そして、世界がますますグローバライズされていくにつれて、この翻訳需要も増加していくでしょう。
このような問題の解決策として、機械翻訳の実用化が模索されています。しかし、現状のAI翻訳、またその延長線上の精度が向上した機械翻訳システムでも、人間の翻訳に近づくことはないと言えます。例えば、スコポスに沿った訳文の産出はできません9)藤田篤(2018)「機械翻訳ができそうなこととできないこと」 日本通訳翻訳学会第19回年次大会 特別企画公開シンポジウム『翻訳におけるテクノロジーを考える』Retrieved January 22, 2019, from http://paraphrasing.org/~fujita/publications/mine/fujita-JAITS2018-slides.pdf。
現状の機械翻訳も、これからの機械翻訳も、多くの場合、その訳文がどのようなコミュニケーションに用いられるかを判断して翻訳を行うことはできないのです。逆に言えば、機械翻訳を適切に使うためには、ユーザーがスコポスにあわせて訳文を修正する必要があります。しかし、スコポスによっては、修正するというよりも、自分で初めから翻訳しなければならないケースが出てくるでしょう。
つまりは、誤訳であるかどうかのレベルを超えた、スコポスに合わせた翻訳を実現するためには、ユーザー側が異文化理解と高い英語運用能力を持っていることが不可欠だと考えています。
ゆうすけ
Nanami
Nao
ゆうすけ
おわりに
今回、僕たちの意見はすべて「必要である」でした。
その理由をまとめるとこのようになります。
- 機械翻訳を適切に使用するためにも、異文化やスコポスを理解する必要がある。
- 自動翻訳結果の正誤を確認する必要がある。
- 翻訳に頼るだけでは、情報の格差に繋がってしまう。
グローバライズされる世界が適切な異文化コミュニケーションを必要とする背景において、翻訳はますます重要な概念になっています。しかし、翻訳の需要が増える一方、翻訳者の数が足りないため、低コストでデリバリーの早い機械翻訳が注目を浴びています。一方で、そんな機械翻訳には限界があり、その限界こそがこれから私たちが学ぶべきものです。それは、文化間の差異や、翻訳のスコポスを理解することです。これらを理解するためには、小手先の機械翻訳の使い方を知ることではなく、やはり言語を学ぶ必要があります。
References
↑1 | 浅野享三(2018)『人工知能時代の外国語教育』南山大学短期大学部紀要終刊号, pp. 95―105. |
↑2 | Birdwhistell, R. (1970). Kinesics and context. Philadelphia: University of Pennsylvania Press. |
↑3 | Internet World Stats. (2017). INTERNET WORLD USERS BY LANGUAGE. Retrieved December 27, 2018 from https://www.internetworldstats.com/stats7.htm |
↑4 | 山田優, 大西菜奈美. (2018). それでも学生はポストエディターになれるのか?ニューラル機械翻訳(Google NMT)を用いたポストエディットの検証. 言語処理学会第24回年次大会発表論文集, pp.738-741. |
↑5 | 豊島知穂, 藤田篤, 田辺希久子, 影浦峡, Anthony Hartley. (2016). 校閲カテゴリ体系に基づく翻訳学習者の誤り傾向の分析. 通訳翻訳研究への招待, Vol. 16, pp. 47-65. |
↑6 | International Organization for Standardizationの略。ここでは翻訳の国際規格について言及しています。ISOについては、こちらの記事が詳しいです。『翻訳サービスとISO:国際規格 ISO17100』 |
↑7 | みらい翻訳(2017)「TOEIC900点以上英作文能力を持つ深層学習による機械翻訳エンジンをリリース」 Retrieved October 25, 2018, from https://miraitranslate.com/uploads/2017/06/2d5778dcdee47e4197468bc922352179.pdf |
↑8 | Common Sense Advisory. (2018). Machine Translation for Human Innovation. Retrieved on November 17, 2018 from http://www.commonsenseadvisory.com/machine_translation.aspx |
↑9, ↑10 | 藤田篤(2018)「機械翻訳ができそうなこととできないこと」 日本通訳翻訳学会第19回年次大会 特別企画公開シンポジウム『翻訳におけるテクノロジーを考える』Retrieved January 22, 2019, from http://paraphrasing.org/~fujita/publications/mine/fujita-JAITS2018-slides.pdf |
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