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シェイクスピアと翻訳

みなさん、暑い日が続いていますが、体調管理はいかがでしょうか?私はクーラーをガンガン効かせて過ごしています。そんなダメダメな感じで夏を過ごしているMakoです。

先週の7/21(土)に関西大学梅田キャンパスにて2回目のワカテミートアップを開きました。

今回はシェイクスピアの翻訳についてプレゼンをさせていただきました。完全に自分の趣味に走っていて、みなさんが得る物が少ない形になってしまいましたが、すごく楽しくやらせてもらいました。

シェイクスピアの四大悲劇の二つと言われている「オセロー」と「ハムレット」の様々な翻訳をメンバーで見ていきました。「オセロー」では、イアーゴのキャラクター性は翻訳でどのように変わるのかを大場健治さんの翻訳を通して検証してみました。「ハムレット」は1996年Kenneth Branagh氏が監督された映画Hamletの字幕についてメンバーで話し合いました。

イアーゴはシェイクスピアの作品の中で最も「悪」と言われているキャラクターです。実際イアーゴはオセローを貶めようとします。ですが「悪」だけで片付けるのはあまりに複雑なイアーゴ、なぜかと言うと彼の本性は誰にもわからないからです。イアーゴ自身もこのように言っています

おれは見せかけとは違う
ーAct1,Scene1,Line64

最もキャラクターを理解するために重要なのは動機ですが、イアーゴの動機は今でもシェイクスピア学者の中で議論されています。イアーゴは人によって態度を変えたり、自分の行動に対しての動機をコロコロ変えています。そこでこのイアーゴの複雑な部分を興味深く描いているのが大場健治さんの翻訳です。

参考文献

オセロー| 大場健治翻訳

大場健治さんの翻訳では、イアーゴは人によって喋り方が変わっています。例えばオセローの前では中性的な喋り方や…

そういう男には一刻一刻が地獄の苦しみでしょうに
-Act3,Scene3,Line175

一人になると大人が子供みたいにはしゃぐ喋り方…

ようし、やってやるぞ、あいつの職を奪う、それでおれの望みも万々歳
-Act2,Scene1, Lines375-6

同じ人物だったのかと驚くメンバーもいました。

このように、大場健治さんの翻訳によってイアーゴのキャラクター性が変わることがすごく興味深いと思いました。

ここで、翻訳の分析は金水敏さんの役割語を使っていきます。

役割語とは

ある特定の言葉づかい(語彙・語法・言い回し・イントネーション・等)を聞くと特定の人物像(年齢、性別、職業、階層、時代、容姿・風貌、性格等)を思い浮かべることが出来るとき、あるいはある特定の人物像を提示されると、その人物がいかにも使用しそうな言葉遣いを思い浮かべることができるとき、その言葉遣いを「役割語」と呼ぶ
(金水 2003:205)

役割語を使っての細かい分析はのちにまた投稿させて頂きます!


続いては, Kenneth Branagh監督の「ハムレット」の字幕をメンバーと見てみました。「ハウレット」といえば ”To be or not to be? That is the question” (Scene3,Act1,Line57) のシーンですよね。

参考映画

ハムレット| ケネス・ブラナー監督

小田島雄志さんの翻訳はこうなっています…

このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ
-第三幕第一場

でも字幕は…

生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ

実際に小田島雄志さんの翻訳は直訳になっています。でもやっぱり一番親しみのある翻訳は字幕翻訳でしょう。調べたところ、誰が初めこのように訳したかは不明だそうです。

字幕はやっぱり親しみやすさを強調し、”To be or not to be”の言葉を超えた意味、ハムレットはどれほど死を恐れているのかが伝わっています。でも、解釈を変えると”To be or not to be”は生と死の問題ではなく、行動を起こすか起こさないかの恐れともとれます。なので様々な解釈を描くことができるのは訳本なのでしょう。

今回は表面的な部分しか触れられませんでしたが、これからまたシェイクスピアの翻訳を深掘りしていきたいと思います。

次回のミートアップは8/26(日)で現在予定しています。参加希望・質問はお問い合わせからお願いします!

では、また!

Reference
  • Bloom, Harold. Iago. Chelsea House Publishers, 1992.
  • Branagh, Kenneth, director. Hamlet. Warner Brothers Home Entertainment, 1996.
  • Foakes, R. A. “Hamlet’s Neglect of Revenge.” Hamlet: New Critical Essays, edited by Arthur F. Kinney, Routledge, 2002, pp. 85–98.
  • Shakespeare, William. Hamlet. Norton, 1992.
  • Shakespeare, William. Othello. Edited by Edward Pechter, W.W.Norton & Company, 2004.
  • 大場 健治, translator. 「オセロー」. 株式会社研究者, 2008.
  • 小田島 雄志, translator. 「ハムレット」. 白水社, 1983.
  • 金水 敏. 「役割語研究の展開」. くろしお出版, 2011.

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