記事更新!「あなたの訳はどんな訳? – 7つの翻訳方略を覗く」(2019.02.03)

言語学習はグローバル社会における自己を形成する―AI翻訳がある時代に英語を学ぶ必要があるのか?

この記事の概要
AI翻訳が台頭する時代において、外国語学習は必要かという問いを言語能力以外の観点から考えてみます。本稿では、生活上のスキル、ことばへの関心、機械翻訳の使用との関わりに注目します。

「一生日本で暮らすし、英語なんかできんでもいいねん。グーグル翻訳とかアプリを使った方が早いし。」と、英語が苦手な友人が言うのを何度も耳にしてきました。

確かに、AI翻訳の発展は目覚ましいものですが、皆さんはどうお考えでしょうか?
私は英語を専門的に扱う方だけではなく、一般の方にとっても英語学習は必要だと考えます。英語学習には、生活上のスキル、ことばへの関心、AI翻訳の使用に関わる3点の利点が備わっていると考えています。

英語学習の利点とは

グローバル社会で生きる力を育む

1点目は社会的スキルの向上です。
ここでの社会的スキルとは、対人行動、自己に関する行動、課題に関する行動に対するスキル1)Gresham, F. M . (1986). Conceptual and definitional issues in the assessment of children’s social skills : Implications for classification and training. Journal of Clinical Child Psychology, 15, pp.16-25.のことです。これに付随し、グローバル社会での生活スキルが身につくことも期待できます。英語学習では日英を比較する機会がありますが、比較対象は言語だけでなく、各々の性質や特徴を含めた文化でもあると考えられます。

そのような比較は多文化が混在する国際社会における文化差を「優劣」ではなく、単なる「違い」と認識する助けとなり、グローバル社会でのアイデンティティを育むことになるのではないでしょうか2)浅野亨三(2018)「人工知能時代の外国語教育」『南山短期大学部紀要』終刊号, pp.95-105

さらに、英会話教室に通う子どもたちの言動についての研究もあります3)渡邉万里子(2018)「児童英語教育における人間的成長ーnatural discourseのインタラクション分析に基づいてー」『人間生活文化研究』28, pp. 20-45.。あるクラスの生徒たちは躊躇せず積極的に発言し、他人と異なることを恐れず、自らのアイデンティティを確立しているようです。これらは将来の社会で非常に重要なスキルだと考えます。

異言語を知ることで母語を知る

2点目は、言語や文化などに対する関心が高まることです。例えば、日本語では「わたし」「僕」「おれ」「あたし」などの自分自身を指す語彙が豊富で多様に変化します。無意識でも文脈や発話者のアイデンティティによって、その意図は異なり、単なる主語にも特別な意味があると言えます。日本語母語話者は無意識にそれを駆使することで「談話」を構築し、相互理解に近づこうとしているとわかります。

談話
「談話」とは、言語使用のこと。特に、ある活動を遂行するため、発話者の意見やアイデンティティを伝えるための言語使用のこと。 4)Gee, J. P. (1999). An introduction to discourse analysis theory and method (2nd ed.). New York, NY: Routledge.

しかし、英語ではほとんどの場合“I”と訳されます。これは比較対象があって初めて気づく部分かもしれません。通訳翻訳に触れる際には、文字通りの意味以上の意味がある可能性を知っておくことが大切だと考えます。

AI翻訳を使いこなすには

最後に、機械翻訳と人間を対比してみます。Weblio5)Weblio. Retrieved April 3, 2019 from https://translate.weblio.jp/guide/機械翻訳の長所と短所は「機械翻訳の利点は手軽に他言語を自国語に翻訳して読める」としています。このような考えで機械翻訳を使用される方は多いと思います。

実際に、“if Jim doesn’t kill me”という文を機械翻訳にかけてみると、「もしジムが私を殺さないのなら」と出ました。人間が翻訳する場合、 “kill”は「嫌う」や「好きじゃなくなる」と訳すことがあります。発話者の性格や語彙のインパクトなどを考慮するからです。このような配慮は「人間ならでは」にみえます。英語学習を通じて、一般の方も機械翻訳を使用する際のことば周辺への意識を高める必要があると考えます。

英語学習のポテンシャル

英語学習は語学力そのものだけでなく、社会的スキルの習得やアイデンティティの確立を可能にします。また、異言語や母語を含む「ことば」の意味を考えることや知ることに繋がることが期待できます。このようなスキルや感覚をもって初めて、AI翻訳を効果的に使用することができるのではないでしょうか。英語学習から得られる利点は、さらなる多様化が進むであろう今後の社会における生活の鍵となると考えています。

英語学習は語学力そのものだけでなく、社会的スキルなどの習得を可能にします。また、それはグローバル社会における生活の鍵となると考えています。

Yuki

References   [ + ]

1. Gresham, F. M . (1986). Conceptual and definitional issues in the assessment of children’s social skills : Implications for classification and training. Journal of Clinical Child Psychology, 15, pp.16-25.
2. 浅野亨三(2018)「人工知能時代の外国語教育」『南山短期大学部紀要』終刊号, pp.95-105
3. 渡邉万里子(2018)「児童英語教育における人間的成長ーnatural discourseのインタラクション分析に基づいてー」『人間生活文化研究』28, pp. 20-45.
4. Gee, J. P. (1999). An introduction to discourse analysis theory and method (2nd ed.). New York, NY: Routledge.
5. Weblio. Retrieved April 3, 2019 from https://translate.weblio.jp/guide/機械翻訳の長所と短所

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