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“resolutionary”をどう訳す?―産業翻訳の概要

この記事の概要
翻訳が具体的な実務である産業翻訳では、なによりもクライアントのニーズが重視されます。そのため、用語集や文体の手引きに従うことや、自分の専門分野や翻訳可能な量をクライアントに明示するなど、翻訳者コンピテンスの高さが求められます。

訳すことの難しさ

ある広告のキャッチコピーで”resolutionary”という単語が使われていました。

この単語をあなたはどう訳しますか?

辞書に載ってないよ!と思ったそこのあなた、その通りです!

これは「解像度」という意味の”resolution”と「革命的」という意味の”revolutionary”を組み合わせた造語なのです。

ならどう訳せばいいのでしょう?

この広告で宣伝されていたのは新型のタブレット端末でした。そこから考えると”resolutionary”は「タブレットの解像度が革命的に向上している」という意味であると想像できます。

もしもこの単語が小説などに出てきたなら、注釈を付け加えれば済みます。また、IT文書に用いられていたならば、そのままカタカナにしても良いかもしれません。

しかし、この両方は広告には不向きと言えます。広告に注釈を付け加えれば、宣伝効果は薄いでしょうし、インパクトがありません。かといってカタカナにしても意味はうまく伝わらないでしょう。

結果として、”resolutionary”は「目に見えて革命的」と訳されました。こうすることで意味が伝わり、注釈は不要になると訳者は考えたのでしょう。この訳は宣伝文句に重要な「人目をひいて、わかりやすい」という点で、良質であると言えますね。

このように翻訳者は、その訳文がどのように用いられるのか、訳文の目的を考慮しなければなりません。これをスコポス理論と言います。

産業翻訳者のお仕事

産業翻訳とはIT関連の文書や特許など、主に一般企業が必要とする翻訳のことを言います。

この分野で翻訳者がまず重要視することはクライアントのニーズです。

産業翻訳では、クライアントから用語集や文体の手引きが渡されることが珍しくありません。

例えば筆者が大好きなAppleのiPhoneはカタカナ表記だと「アイフォーン」が正しいですし、FAXは「ファクス」と書かなければならないという細かなルールが設けられています。これらのルールをしっかりと守ることでクライアントからの評価が上がり、次の仕事につながります。

また、フリーランスの翻訳者は「この料金でどれくらいの文量を訳せるのか」や「どの分野に詳しいのか」といった質問にも答えを用意しておく必要があります。そうすることでクライアントが依頼しやすくなるのです。

まとめ

  • 産業翻訳はクライアントのニーズに応えることが重要視される。
このような実践の場と理論を融合させることが(少なくとも)研究界では重要視されています。

ゆうすけ

参考文献

『翻訳学入門』と同様に翻訳通訳学の基礎の基礎が詰まっています。歴史、社会、研究アプローチなど多様な角度から翻訳通訳を解説しています。文体は比較的易しいので、当分野が初心者の方はこの本から始めてみると良いでしょう。

ゆうすけ

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