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ファンサブの是非

ワカテミートアップとは...
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今回は、2018年8月26日に行った第3回目のワカテミートアップについて報告したいと思います。
長期休暇だったこともあり、ワカテメンバーが3人集まりました。

今回は、ワカテメンバーの1人が「ファンサブの是非」について、プレゼンを行いました。
第1回目のワカテミートアップでも話題に出ていた「ファンサブ」ですが、翻訳論や著作権侵害の可能性を鑑みると、賛否両論があります。しかし、型にはまらない大胆な手法や異文化の取り込み方は、学べることもあるかと思い、今回のトピックに選びました。前半はプレゼンテーションにてファンサブの概要について再確認し、後半は実際にファンサブによる字幕とプロの字幕を見比べて、異なる点を挙げ、どのような点が実際の翻訳に取り入れられそうかを、参加者同士でディスカッションをしました。

「ファンサブ」って?

前半のプレゼンテーションでは、ファンサブの特徴や起源、ファンサブの支持層、また、ファンサブが世に与えた影響などについて、共有しました。
ファンサブは、ファンによって自発的に翻訳された字幕のことです。1980年代にアメリカのアニメ愛好家によって、作られたのが始まりとされています。
当時、プロによる翻訳が存在しなかった作品を友人に紹介しようと字幕を付けたのがきっかけだったそうです。現在でも、そのような動機で字幕を作成するファンは多く、下記のような工夫を凝らしたファン独自の字幕が親しまれています。

アニメファンサブには以下のような特徴があります1)Perez Gonzalez, L. (2007). Intervention in new amateur subtitling cultures: a multimodal account. Linguistica Anterpensia. 6: 67-79.

  • 字数など既存の字幕翻訳のルールに縛られない表現
  • 字体大きさの多様性
  • 字幕の色分け
  • 「頭注」と呼ばれる注釈の配置
  • 画面下部以外の字幕的要素など

ファンサブは公式な翻訳ではないため、著作権侵害問題にあたるとし、実際に逮捕者の出る規制の対象にもなります。しかし、ファンサブの必要性を感じた企業が翻訳者としてファンサブ作成者を雇用するきっかけになったり、サイマル放送などのサービスにも影響を与えるようになったことも事実です。

ファンサブはプロの字幕とどう違う?

こうした歴史のあるファンサブですが、実際にプロの翻訳と比べて、どういった翻訳効果を持つのかを見比べてみました。視聴したのは、イギリスのドラマシリーズ「スキンズ(Skins)」です。イギリスの少々破天荒な学生生活を描いた本シリーズのシーズン5、エピソード1の一部を抜粋して紹介しました。

英語の台詞の書き起こしとプロとファンサブのそれぞれの日本語字幕を含む表を作成し、どのような点が類似するか、異なるのかを分析しました。
プロの字幕は、簡潔に要点がまとめられており、印象としても目で追うストレスが少なく(≒一度目を通すだけで内容が理解できる)、対象となる視聴者を広く捉えた無理のない字幕であると個人的には感じました。ディスカッションでも、プロの字幕への批判的な意見は少なく、過不足ない翻訳と言えるものでした。

対して、ファンサブは、明らかに字数が多く、括弧書きや星印が使われるなど、字幕翻訳のルールからはかけ離れた印象を与えるものでした。また、視聴者への内容理解の疎外や読むことへのストレスに対しては批判的な意見が挙げられました。しかし、ファンサブのスコポス(翻訳を行う目的)が何かを考えた時、このような訳出が望まれているのかもしれません。そのスコポスとは、視聴者が原文側の文化(この場合は、欧米文化)を学びたい人たちであることから文化的な要素を排除しないこと、オンラインで視聴することが主であるファンサブは一時停止や巻き戻しが容易であることから文字数制限を緩和させてもよいことなどが挙げられます。

最後に

ファンサブだけでなく、現在はSNSなど、個人がインターネット上で動画をアップロードする機会も増えており、自作の字幕や自動作成の字幕を利用する人も増えているようです。それぞれのコンテンツ、視聴者層に合わせた多様な翻訳がこれからもっと目にするようになるでしょう。

参考文献

その他の文献
  • Bloom, H. (1992). Iago. Chelsea House Publishers.
  • Foakes, R. A. “Hamlet’s Neglect of Revenge.” In A. F. Kinney (Ed.), Hamlet: New Critical Essays (pp. 85–98). Routledge.
  • Perez Gonzalez, L. (2007). Intervention in new amateur subtitling cultures: a multimodal account. Linguistica Anterpensia. 6: 67-79.
  • Shakespeare, W. (1992). Hamlet. Norton.
  • Shakespeare, W. (2004). Othello. W. W. Norton & Company.
  • 大場健治 (2008). オセロー. 研究社.
  • 小田島雄志 (1983). ハムレット. 白水社.
  • 金水敏 (2011). 役割語研究の展開. くろしお出版.
  • 篠原有子 (2013). 映画字幕は視聴者の期待にどう応えるか. 通訳翻訳研究, 12, 209-228.

References

1 Perez Gonzalez, L. (2007). Intervention in new amateur subtitling cultures: a multimodal account. Linguistica Anterpensia. 6: 67-79.

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