ファンサブの是非―ワカテミートアップ

ワカテミートアップとは...
各々の考えを答え合わせしながら問いを追究する、対話と学び合いの場です。 詳しくはこちら

こんにちは。なつきです。
今回は、8/26に行った第3回目のワカテミートアップについてシェアしたいと思います。
長期休暇だったこともあり、ワカテメンバーが3人集まりました。

今回は、私が「ファンサブの是非」について、プレゼンテーターをさせていただきました。
第1回目のワカテミートアップでも話題に出ていた「ファンサブ」ですが、翻訳論や著作権侵害の可能性を鑑みると、賛否両論があります。しかし、型にはまらない大胆な手法や異文化の取り込み方は、学べることもあるかと思い、今回のトピックに選びました。
前半はプレゼンテーションにてファンサブの概要について再確認し、後半は実際にファンサブによる字幕とプロの字幕を見比べて、異なる点を挙げ、どういったことが実際の翻訳に取り入れられそうか、みんなでディスカッションをしました。

「ファンサブ」とはなにか

前半のプレゼンテーションでは、ファンサブの特徴や起源、ファンサブの支持層、また、ファンサブが世に与えた影響などについて、共有しました。
ファンサブ(Fansub)は、ファンによって自発的に翻訳された字幕のことです。1980年代にアメリカのアニメ愛好家によって、作られたのが始まりとされています。
当時、プロによる翻訳がなかった作品を友人に紹介しようと字幕を付けたのがきっかけでした。現在でも、そういった動機で字幕を付けるファンは多く、その他にも、下記のような工夫を凝らしたファン独自の字幕が親しまれています。

アニメファンサブの特徴
アニメファンサブには以下のような特徴があります1)Perez Gonzalez, L. (2007). Intervention in new amateur subtitling cultures: a multimodal account. Linguistica Anterpensia. 6: 67-79.

  • 字数など既存の字幕翻訳のルールに縛られない表現
  • 字体や大きさの多様性
  • 字幕の色分け
  • 「頭注」と呼ばれる注釈の配置
  • 画面下部以外の場所への字幕的要素など

ファンサブは公式な翻訳ではないため、著作権侵害問題にあたるとし、実際に逮捕者の出る規制の対象にもなりますが、ファンサブの必要性を感じた企業が翻訳者としてファンサブ作成者を雇用するきっかけになったり、サイマル放送などのサービスにも影響を与えるようになりました。

ディスカッションで話合ったこと

こうした経緯のあるファンサブですが、実際にはプロの翻訳と比べて、どういった翻訳効果を持つのかを見比べてみました。視聴したのは、イギリスのドラマシリーズ「スキンズ(Skins)」(channel4公式WEBサイト)です。イギリスの少々破天荒な学生生活を描いた本シリーズのシーズン5、エピソード1の一部を抜粋して紹介しました。

実際の英語での台詞の書き起こしと、プロとファンサブの日本語字幕を書き起こして、表を作成し、見比べてもらいました。
プロの字幕は、簡潔に要点がまとめられてあり、印象としても目で追うストレスが少なく、対象となる視聴者を広く捉えた無理のない字幕であると個人的には感じました。ディスカッションでも、プロの字幕への批判的な意見は少なく、不足ない翻訳であると言えるものでした。

対して、ファンサブは書き起こしの表を見比べると、明らかに字数が多く、括弧書きや☆印が使われるなど、字幕翻訳のルールからはかけ離れた印象を与えるもので、視聴者への内容理解の疎外や読むことへのストレスに対しては批判的な意見が挙げられました。しかし、ファンサブのスコポスが何かを考えた時、その文化を学びたい人たちが視聴者ならば、オンラインで視聴することが主であるファンサブは一時停止や巻き戻しが容易であり、視聴の仕方を選べるならば省略の少ない訳出も望まれているものなのかもしれないという意見も出ました。

まとめ

ファンサブだけでなく、現在はSNSなど、個人がインターネット上で動画をアップロードする機会も増えており、自作の字幕や自動作成の字幕を利用する人も増えているようです。それぞれのコンテンツ、視聴者層に合わせた多様な翻訳がこれからもっと観れるようになるかもしれません。

参考文献

その他の文献
  • Bloom, Harold. Iago. Chelsea House Publishers, 1992.
  • http://jaits.jpn.org/home/kaishi2012/13_shinohara.pdf
    Foakes, R. A. “Hamlet’s Neglect of Revenge.” Hamlet: New Critical Essays, edited by Arthur F. Kinney, Routledge, 2002, pp. 85–98.
  • Shakespeare, William. Hamlet. Norton, 1992.
  • Shakespeare, William. Othello. Edited by Edward Pechter, W.W.Norton & Company, 2004.
  • 大場 健治, translator. 「オセロー」. 株式会社研究者, 2008.
  • 小田島 雄志, translator. 「ハムレット」. 白水社, 1983.
  • 金水 敏. 「役割語研究の展開」. くろしお出版, 2011.

References   [ + ]

1. Perez Gonzalez, L. (2007). Intervention in new amateur subtitling cultures: a multimodal account. Linguistica Anterpensia. 6: 67-79.

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